第一章 概略

1.1 工筆画について

中国画は表現形式として工筆画と写意画が分類される。その表現方法が異なるにつれ審美効果も異なる。 工筆画は線描後、形象の構造や色彩、透視構造に随って線類及び色彩の濃淡関係で対象を表現するものである。 繊細で、色彩が豊富で、写実的がその特徴である。また、技法の異なるによって白描(線のみ)、工筆重彩、工筆淡彩と無骨画が分類されている。 写意画は日本ではよく水墨画と謂われ、対象の形象を拘らず、物体の特徴、自然規律、精神面を捉え、簡潔な技法で、洒脱な表現方法で表現するものである。 写意画は大写意、小写意、墨彩が分類される。

1.2 花鳥画の歴史

文字通り、花鳥画は花、鳥を中心とする絵画である。世界の美術界には、中国画だけには花鳥科を独立されている。 中国画は題材として山水、人物、花鳥を分ける。植物やら、動物やら、昆虫やら、水族やら、土石、渓流、風雲、日月等を含む、 全て花鳥画の題材になる。すなわち「動植魚虫、物華天情」である。
花鳥画は独立な絵画形式として、人物画、山水画と異なる技法、表現形式で存在する。中国長い歴史の中には、文化の変異、 社会の発展によって形成される独特な芸術形式である。 また、花鳥画は西洋の静物画と異なる処が中国文化に貫き本質的なものがあり、即ち「気」である。中国文化の中では、 高尚な思想と合理な行為が自然の規律と合致することが認め、全て自然現象のあらわす形態である。これは中国文化の最高境界である。 道家の宇宙観は天下万物の源は「道」である。その「道」は気を生じ、「気」は陰陽を分け、「陰陽」は相互変化、制約して万物を形成される。 当然ながら、そのなかにも人間を含んでいる。だから、人間と物は本質的な違いものがなく存在形態だけが異なり、すべて感情を持ている。 人間は絵画を通して、人間の思想、追求、感情、教養、品格を表現することができる。
従って、花鳥画は独立な絵画科、豊富な内容、完善な手法で人間の感情や思想と自然を都合よく融合する最高的な芸術境界を表現できる。 また、中国の長い歴史に形成されている豊かな思想から神遊できる意味深深な文化形態が中国画の源泉でもある。 「無言毎覚情懐好、不飲能令興味長」、「無言でも良い心情を伝われ、不飲でも美味しい味を長く賞味できる」。これは正に中国画の真髄である。

1.3 工筆画の工具・材料及び用途

工筆画の工具は、主に紙、絹、筆、墨と顔料がある。補助材料は膠、ドサなどもある。

宣紙・画絹

紙は宣紙を使用している。中国の画用紙は唐代から生産し始める。安徽省の宣城の紙が一番有名だから、宣紙と称された。 現在、四川省の夾江、浙江省の富陽等も生産している。いずれにでも、安徽省産の紙が柔らかく、靭性がよく、質が良くて中国画に最適である。 宣紙は生紙と熟紙がある。熟紙は薬物で処理した物で、滲まないのが特徴である。生紙は主に棉連、浄皮、夾連、料半、玉版があり、 熟紙は氷雪、清水、書画、蝉翼、雲母などがある。寸法は四尺(138×69cm)、六尺(180×97cm)、八尺(248×124cm)、丈二(368×168cm)などがある。 いずれ表と裏があるので、使用上に要注意。裏は製紙時に残した痕があるので、区別が容易である。

自制熟紙の方法:
各々に温水250gに膠50gを溶ける;温水250gにドサ25gを溶ける。二種類の液体を混合し沸騰水1kgを加えてよく混ぜてから冷却すれば熟紙製紙用薬物が 出来上がりである。制作時、刷毛で均一に薬物を生紙に塗り、清潔な壁に貼るか或いはひもで掛けて乾かす。気温が25℃前後が最適である。 ただし、新製の熟紙は生意気で、すぐ使えないので、陰涼処にドサを蒸発しないように一定な時間に眠らせば良いである。 絹は糸で作ったもので、古いからよく使われている画用絹である。それも生絹、熟絹がある。ただし、塾絹は自製が難しくて、使用上も紙よりかなり複雑だので、 なれるまでが時間がかかる。かつ、現代工筆画は複雑な技法を取り込んでいるので、絹が適用しない。

筆は中国画に特有な不可欠なもので、線で形象構造を表現するには最適なものである。一般に工筆画は二類の筆が必要である。一つは線描きのもので、 ウサギ毛、アナグマ毛、テン毛、狼毛等硬く弾性があるのが特徴である。主に紅毛、衣紋、葉筋、描筆などがある。線描き筆の要求が厳しく、良い筆がなかなか 出会わない、できれば特注の方が安心できるでしょう!もう一つは?染用筆で、すなわち染め用の筆である。ヒツジ毛の筆がよく使用する。柔軟性と弾力性がポイントである。 工筆画は一般に線描き筆が一号、二号、三号各一本、細かく書ける小紅毛2本、描眉2本、?染用筆5本位であれば殆ど対応ができる。ここで注意するのが使用後素早く ティシューペーパで水を吸い込んで筆掛けに掛けることである。特に線描き筆は直接に水中に洗うのが禁じる。丁寧にティシューペーパで水を吸い取って、毛を乱れないように 十分な注意を払ってください。日本製の筆は銘柄が多く、品質が高い筆も結構あるが、中国製のものより弾力は高い、高価で、初心者には勧めない。

墨・硯

墨は、秦漢時代(紀元前206年以前)から広がり、中国の「文房四宝」の一つである。貯蔵が易く、変色しないのが特徴である。 上等なものは一般に高級香料など入れる。古いものが黄金より高いのも珍しくないのである。一般に松煙、油煙、漆煙がある。 絵描きには油煙と松煙をよく使われる。工筆画は油煙がよく使われ、松煙が蝶々、基礎染めしか使わない。 墨の選び方はまず粒子が細かく、潤い感があり、擦り面が滑らかのがポイントである。良い墨は紫光、光沢がある。 著者は日本の古梅園製の帝王紫を良く使う。水で濡らすと多少落とし現象があるが品質がよく使いやすいのでお進め。 初心者は墨汁を使用しでも良いが工筆画にあまり適用しないのである。なぜなら、複雑な構造、変化を細かく表現するのが豊富な色層が必要とするからだ。 練習用として使用してください。中国北京産の「一得閣」、上海産の「曹素功」をお進め。日本産の墨汁が書道用、水墨画用のものが多く、 粒子が粗いので工筆画に適用しない。
硯は種類が多く、石製のがお勧め。中国では安徽省産の「歙州硯」、広東省産の「端渓硯」、甘粛省産の「洮河緑石硯」、「澄泥硯」などがあるが、 値段が高いので、鑑賞用に良いが初心者には不適切である。一般に磨った墨の粒子が細かくであれば良い。日本でも値段が適切なものが結構あるので、 身近いのもを揃えば結構である。

顔料

中国画の顔料は略二種類がある。一つは鉱物顔料で自然の鉱物を原料として作ったもので、覆盖力が強い、不透明のが特徴である。 主に赭石、朱砂、朱膘、石青、石緑、鋅白などがある。もう一類は植物顔料で植物、動物を原料として作ったもので、親水性がよく透明のが特徴である。 主に花青、臙脂、曙紅、藤黄等がある。市販品は上海産の塊料顔料、チューブ顔料、蘇州産の「姜思序堂」塊料顔料、粉状顔料などがある。 初心者は上海産のセットチューブ顔料がお進め。日本産の顔料は日本画に適用するが、粒子が粗いため、工筆画に適用しない。 ただし、種類は豊富だので、水彩の部分が転用できる。

膠・ドサ

膠は動物皮で作ったものを進める。特に牛皮材料として作った膠が最適である。但し、膠が臭い易いので、少量を作って使用した方が良いでしょう。 ドサは透明で、套染(順次で色を重なって染めること)時よく使うのである。ドサが色彩を固定できるので、一般に4-5回位套染後一回ドサを染める。 ドサ水の作り方:まず、塊状ドサを洗浄し、綺麗な泉水を1kgに50gのドサを入れて完全に溶けるまでよく混ぜる。使用時、上水を少量を取ってス既に作った 膠水と混ぜて使用する。膠水入りのドサ水がたくさん作ったら臭くなるので要注意。但し、ドサ水だけが腐らないので、長ければ長い程質が性質が良くなるので、 たくさん貯蔵した方が良い。

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